認知特性とは、見る・聞く・読むといったインプットと、それを理解・整理・記憶する処理、そしてそれらをもとに書いたり話したり表現するまでの、一連の方法と、人によって異なるその偏りのことを言います。
先生や先輩が勧める学習方法を実践しても結果が出ないなどといった場合、それは能力が劣っているのではなく、認知特性の違いのためにその効果を発揮できていないというケースが多く見られます。
例えば、ラジオ講座やCD教材で英語を浴びるように聴くことで飛躍的に英語力が上がる人がいる一方、ひたすら書くことで力を伸ばす人や、文の構造や単語をきっちり整理・理解することで高得点を取れる人がいます。その違いこそが、各々の認知特性の違いです。
私たちは、認知特性を大きく3つに分けて考えます。視覚優位:目で見た情報を処理するのが得意なタイプ、言語優位:読んだ情報を処理するのが得意なタイプ、聴覚優位:耳で聞いた情報を処理するのが得意なタイプです。
そして、その大きな3つの傾向をそれぞれ2つずつ、以下のような6タイプにわけて捉えています。
- 視覚優位:カメラタイプ
写真のように、2次元で捉え思考するタイプ - 視覚優位:3Dタイプ
空間や時間軸を使って考えるタイプ - 言語優位:ファンタジータイプ
読んだり聞いたりした内容を映像化して思考するタイプ - 言語優位:辞書タイプ
読んだ文字や文章をそのまま言葉で思考するタイプ - 聴覚優位:ラジオタイプ
文字や文章を「音」として耳から入れ情報処理するタイプ - 聴覚優位:サウンドタイプ
音色や音階といった音楽的イメージを理解・処理できるタイプ
認知特性テストを受けたことがありますか?あなたはどのような結果だったでしょうか。家族や友人と比較してみると一人ひとり異なっていることがわかります。
では、例えば「あなたはラジオタイプ!」という結果が出た場合、視覚情報や文字情報はその人にとっては無駄なものなのでしょうか? いいえ、決してそんなことはありません。「本田式認知特性テスト コグテンbravo」のようにそれぞれのタイプごとの偏りが表示される結果を見ると、一番高いスコア以外のタイプもそれに近いスコアになっていることがあります。1タイプのスコアだけが突出している人もいますが、全体的に差異が少なくバランスが取れている人もいます。突出型にもバランス型にも、それぞれに合った学習スタイルや生き方があります。
大事なのは、ひとつのタイプだけに囚われず、すべてのタイプのスコアとバランスを確認して傾向を把握し、最適な思考や処理の仕方を導き出すことだと私たちは考えています。
認知特性テストを受けた後、「特別良いタイプが無い」「極端ににスコアが低い分野がある」という悩み相談を受けることがあります。しかし忘れたくないのは、認知特性とは個人の情報処理の好みや特性であって、良し悪しや優劣をはかっているものではないという点です。タイプごとに凹凸の無い人は、バランスよく各特性を持っているので、どんなインプットでも柔軟に対応できると考えられますし、スコアの低い特性がある場合には、その特性に特化したような勉強法はその人に合わないものとして効率よく回避することができます。
認知特性は生まれつき備わったものでこれを変えることはできない、と思われる方も多いかもしれません。視覚優位、聴覚優位といったある程度の傾向は確かにありますが、その人を取り巻く人間関係や、教育・文化などの社会環境によって認知機能は変動する可能性が指摘されています。
視覚優位だと思っていた人が、ラジオをよく聞くようになってから、聴覚的な思考をすることが増えてきたというケースもありますし、Youtubeやインスタグラム、TikTokなどのビジュアルメディアが身近に浸透してきてきる昨今、視覚優位者の割合が増えてきていると考えられます。
認知特性はある日突然極端に変わるような性質のものではありませんが、一方で絶対的・固定的なものでもないということも覚えておきたいポイントです。
では、認知特性の傾向を把握しさえすれば、その人に合った最適な学習スタイルや生き方がわかるのでしょうか。
例えば聴覚優位の認知特性テスト結果が出た人に「1日最低2時間、計画的に毎日CD教材で学びましょう」と提案したとして、それだけで成果を上げることができる人は一部だけでしょう。
その人の計画力や抑制力(我慢する力)などの違いによって、数時間一つのことに集中できる人もいれば、1個1個に集中しながら、いろいろなことに細切れに取り組んだほうが効果的な人もおり、計画と実行を繰り返して進めることができる人もいれば、計画を立てること自体が苦手な人もいます。
抑制力や計画力の他、記憶力・計算力・空間認識力等を、当研究所では「認知機能」あるいは「学習能力」として定義しています。認知特性と並行してこれらを測定し、認知特性と掛け合わせて分析することで、さらに個々に適した学習スタイルが提案できると考えています。
一方、せっかくその人の認知機能も加味した最適な学習スタイルを提案したところで、新しい方法への適応ができなかったり、そもそも「成績を上げたい」「志望校に受かりたい」といった欲求が低かったりしては、やはり効果を上げることが難しいといえます。
私たちは、このようなその人特有の行動や反応を決定する特質として、「気質」という側面にも着目しています。気質には適応力の他、こだわりの強さや想像力、コミュニケーション力、時間力、継続力といった力が含まれます。これらは、より良い生き方やより効果の高い学習方法を見出すための重要なファクターです。
本田式認知特性研究所では、認知特性に加え、これらの機能や力を総合的に分析し、個々の特性や能力に合った最適な方法を見つけるお手伝いができるよう、日々研究と開発を行っています。